2024.11.29

トランスファーのリスク

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University

近年の物価上昇に伴い、大学の学費も年々高騰しています。例えば、2024-25年度のUCLAのCost of Attendance(全額自費で払った場合の一年間の学費)は、州内学生が$42,059、州外学生は$76,259と発表されています。5年前と比較すると、州内学生17.5パーセント増、州外学生は16,3パーセント増です。

学費を少しでも抑えるために、ハイスクールを卒業した後に、すぐに4年制大学には進学しないで、学費の安いコミュニティー・カレッジを選ぶ学生が増えています。、コミュニティー・カレッジは、公立の2年制大学です。例えば、Santa Monica Collegeの一単位あたりの授業料は、州内学生の場合は$46です。コミュニティー・カレッジに進学することで、年間の授業料を一万ドル以上削減することが可能です。

コミュニティー・カレッジから4年制大学へトランスファーをすることにより、学費を削減することは可能ですが、一方でトランスファーは大きなリスクを伴います。

(1) 私立大学へのトランスファー

トランスファーで、難関大学を目指す場合は、フレッシュマンで進学するよりも狭き門となる場合が少なくありません。多くの私立大学にとって、トランスファー学生の受け入れは、欠員補充が主な目的です。特に教育の質の高い大学では、アスリート以外でトランスファーを希望する学生は少なく、結果的に転入で受け入れられる学生の枠も小さくなります。Brown Universityは、2023年秋にトランスファーで受け入れた学生は、2,744人の受験者のうち73名でした。

運良く合格を勝ち取ることができても、こんどは単位認定の問題に直面します。コミュニティー・カレッジで履修したクラスすべてを、転学先の大学で単位認定してもらうことは、ほぼ不可能です。転学先の大学と、同じ内容を同じ教科書を使って学んでいても、単位認定されないケースが多々あります。クラスの取り直しが増えれば、卒業時期が延びて、その結果学費も余分にかかります。

(2) 州立大学へのトランスファー

財政的な問題で、学部の一般教養課程に多くの予算を割くことが難しい州立大学は、一定数のトランスファー学生を受け入れることで、一般教養課程のコストを削減しています。州立大学はトランスファー学生を受け入れているので、楽に進学できると思われがちですが、必ずしもそうではありません。

National Student Clearinghouseの調査によると、コミュニティー・カレッジに進学する学生の約8割が、4年制大学にトランスファーして学位を取得することを希望していますが、実際に4年制大学にトランスファーできる学生は4分の1に過ぎません。しかも、トランスファー先の大学で学位を取得する学生は、トランスファー学生のわずか6分の1です。

コミュニティー・カレッジは、学生の質や教員の質に大きなばらつきがあります。そのような環境で、すべての教科で満足のいく成績を収めることは、決して簡単なことではありません。在学中に学習意欲を失い、成績が下がってしまう失敗例は、成功例よりもはるかに多いのです。

全米のほとんどの大学では、1学期でも他の大学で学んだ学生はトランスファー・アドミッションの対象となります。これに対して、カリフォルニアの州立大学は、一般教養科目の履修がほぼ終了した3年生からのトランスファーしか認めていません。3年目からのトランスファーで失敗した場合、選択の幅が大いに狭まってしまいます。

単位認定については、同一州内の2年制のコミュニティーカレッジと4年制の州立大学は、単位互換協定(Articulation Agreement)を結んでいる場合が多いので、トランスファー先の大学で単位が認められないというリスクが避けられます。

UCやUWは全米での知名度が高く、他州からトランスファーを目指す学生も少なくないですが、その場合は、私立大学の場合と同様に、単位認定の問題があります。単位互換協定を結んでいない大学で履修したクラスについては、単位認定の際に、シラバスや授業内容、成績等を細かく評価されます。

学費を考慮したトランスファー

学費を抑えるために、コミュニティー・カレッジから4年制大学へトランスファーを目指す学生は多いですが、トランスファーが、必ずしも学費で有利になるとは限りません。トランスファー学生にとって、奨学金の獲得は、アドミッション以上に狭き門となる可能性があるからです。

メリットベースの奨学金を獲得して学費を下げたい学生は、トランスファーは避けるべきです。各大学は、フレッシュマンで進学する学生に対しては、さまざまなメリットベースの奨学金プログラムを用意していますが、トランスファーで進学する学生向けの奨学金は、限られています。

満足のいく奨学金が獲得できず、トランスファー後の学費が非常に高くなってしまうのであれば、コミュニティー・カレッジに進学するメリットは失われます。

ファイナンシャル・ニードが大きく、学費の大部分を大学に負担してもらえる学生の場合は、そもそもコミュニティー・カレッジに進学するメリットはありません。ニードベースの奨学金が充実している大学にフレッシュマンから進学すれば、質の高い教育を最小の学費で受けられます。

トランスファーは最後の手段

トランスファーのリスクは、単位や学費だけではありません。アメリカの大学は、4年間在籍することで、すべてのサービスを享受できます。多くの学生は、他の国の大学で学んだり、インターンシップをしたり、リサーチのプロジェクトに参加したりなど、在学中さまざまな課外活動に取り組みます。トランスファーをする学生は、このようなサービスのほとんどを失ってしまうことになります。可能な限り、自分にベストフィットな大学に、フレッシュマンから進学を目指すことを、お薦めします。