大学進学を目指す高校生の保護者から、「課外活動への取り組み方について、アドバイスをください」と相談を受けることが多々あります。難関大学に進学するには、高校の成績を上げるだけではなく、課外活動に積極的に取り組むことも重要であると、よく言われます。どうせ何かさせるなら、大学進学に役立つ活動をさせたい、という親心です。
大学のアプリケーションフォームには、academics(学業)とextracurricular activities(課外活動)を記入する欄があります。1,000校以上の大学で使用されているCommon Appでは、高校時代に取り組んだ課外活動を、最大10記載することが可能です。
ここで言う課外活動には、スポーツや芸術などのクラブ活動や、コミュニティーでのボランティア活動、パートタイムの仕事など、クラスルーム以外で行った活動は、すべて対象となります。日々家族のお世話をしていて、自分の活動がなかなかできない高校生もいますが、家族のお世話も立派な課外活動です。「自分にとって意味のある活動」は、すべて課外活動としてアプリケーションに記載できます。
課外活動の意義
アメリカの大学は、課外活動に積極的に取り組む学生を、なぜ高く評価するのでしょうか。この点について、誤解をしている方が多いです。大学は、課外活動そのものを評価しているわけではありません。学生が、課外活動を通じて身につけた能力や経験を、評価しているのです。
クラスルーム以外の活動を通じて、学生はさまざまな経験をします。クラブやチームの仲間との交流から、コミュニケーションやチームワークの大切さを学びます。限られた時間をやり繰りしながら、学習と課外活動を両立させていく中で、時間管理や自己管理の能力を身につけます。コミュニティーに出て、普段接する機会が少ない人と関わることで、社会の一員としての自覚を持つことができ、また広い視野から物事を見る経験ができます。
リーダーシップについても、誤解をしている方が多いようです。難関大学は、将来社会でリーダーとして活躍する人材を求めているので、リーダーシップを示すことが重要である、という考え方は、必ずしも間違いではありません。しかし、重要なのはリーダーとしての肩書ではありません。
「クラブ活動には積極的に参加しているけれど、リーダーとしての肩書が無い」ことを気にする学生もいますが、引け目を感じる必要は全くありません。リーダーシップの取り方は、人それぞれです。チームのコミュニケーションが円滑に行われるように影から支えたり、自分から率先して行動することで、仲間に良い影響を与えたりできれば、それも素晴らしいリーダーシップです。PresidentやCaptainの肩書があっても、これといったリーダーシップを発揮していない学生よりも、高く評価されるはずです。
課外活動の成果を示す方法
Common Appの課外活動の欄には、9年生以降に取り組んだ活動について、活動内容や自分の役割等について記載します。さらに、取り組んだ時期(放課後、休み中など)と、週・年単位で取り組んだ時間数を記します。
ただし、大学は課外活動そのものを評価しているわけでは無いので、課外活動の欄を10全部埋めたところで、それだけでは大学からの評価は期待できません。なぜその活動に取り組んだのか、その活動を通じて、どんな経験をして何を学んだのかを示すことが重要です。
とはいえ、課外活動の欄には、各課外活動についての説明を30語程度しか書けないので、ここで自分の経験を詳しく伝えるのは不可能です。課外活動を通じて、自分が成長したことをアドミッションに伝えるのは、課外活動の欄ではなく、アプリケーションで提出するエッセイです。
Common Appでは、アプライする各大学に対して、650語以内のエッセイを2つ提出できます。自分にとって特に重要な課外活動、つまり自分の成長に大いに役立った活動は、この2つのエッセイの中で、きちんと伝えます。
課外活動の選び方
学生にとって、役に立たない活動は何一つありません。どんな活動でも、積極的に取り組めば、様々な経験をして、自ずと成長します。課外活動の選択肢は無限にありますが、その中から選ぶ際の基準としては、「情熱を持って取り組めること」が挙げられます。自分が好きなこと、がんばりたいことに取り組めば、より多くの経験をして、より大きな成長につながるからです。
「うちの子は、毎日ダンスばかりやっていて、ボランティアのひとつもやろうとしない」と嘆く保護者がいますが、ダンスよりもボランティアの方が、価値のある活動だと考えているのなら、それは大きな間違いです。年に数回、不承不承ながら参加するホームレスへの炊き出しと、情熱を持って毎日取り組むダンス、どちらが自己研鑽になっているかは明らかです。