大学進学情報
最新動向!ウェイトリストの積極活用
大学のアドミッションが変化し続けていることは以前もご紹介しましたが、今年も新たな動きがいくつかありました。その一つとして今回は、「ウェイトリストの積極活用」についてお話しします。
ウェイトリストとは、欠員補充のための補欠学生リスト?です。学生は複数の大学を受験するため、大学側は定員よりも多くの学生に合格通知を送ります。歩留まり(入学率)を予想しながら合格者数を決めるものの、合格者中、何人が入学するかを正確に予想することは難しいため、合格発表後も定員に達するまでウェイトリストから学生を繰り上げ合格させます。
ところが昨年あたりから、学生を見極める手段としてこのウェイトリストを積極的に活用する大学が出てきました。ボーダーライン上の学生を多めにウェイトリストに掲載し、その後の学生の反応を見ながら繰り上げ合格を決めていくのです。
教育コンサルタントの仕事から見る受験の1年
受験生にとって5月1日は特別な日です。アプライした大学の結果は3月末にほぼ出揃い、受験生は合格大学の中から進学大学を1つ決めてデポジットを収め、大学の籍を確保します。その締め切りが5月1日なのです。 今回は、教育コンサルタントの仕事を紹介しながら、受験生の1年間をご説明します。
アメリカでは、教育コンサルタントの支援を受けながら大学を探し、アプリケーションの準備を進めることが広く行われています。なぜなら、アメリカのアドミッションは常に変化している上、とても複雑。しかも、奨学金を含めた学費も重要なポイントとなるなど、それらすべてを考慮しながら、全米規模で最適の1校を見つけるのは至難の業だからです。
日米の大学 (2) 柔軟な米国の大学システム
前回は、日本の大学が直面している課題を指摘しましたが、今回はアメリカの大学の特徴をお話しします。アメリカには多種多様な大学があり、日米の違いを表すのは困難ですが、アメリカの方が「学生本位の運営」と言えます。
アメリカの大学生は、在学中に平均2回専攻を変えると言われています。大学に進学して学んでいく中で、自分のやりたいことが見えてくる学生は数多くいますが、大学にアプライする17歳前後で将来の目標が決まっている学生は多くはありません。また、高校時代から明確な目標を持っている学生でも、大学進学後にもっと興味のある分野が見つかることもあります。そのような学生にとって、専攻を決めずアプライでき、進学後も自由に専攻が変えられるアメリカの大学制度はとてもありがたいものです。
日米の大学 (1) 日本の大学の現状と課題
「アメリカの大学は、アドミッションが複雑で学費も高い。奨学金もどれだけもらえるかわからないので、日本の大学に進学した方が良いのではないか」という質問を受けることがあります。将来、日米どちらの大学に進学するのか迷っている子供たちも多いと思います。「日本の大学なら帰国生枠で有利に進学できるし、学費も安いのでお得」という考え方は一見理にかなっていますが、果たしてメリットはあるのでしょうか。今回は、日本の大学の現状と課題についてお話しします。
今、日本の大学が持つ共通の課題は、「いかに外国人留学生を獲得するか」です。年々受験者数が増えているアメリカの大学とは異なり、大学全入時代?を迎えた日本では、生き残りをかけて学生の争奪戦が行われています。特に近年は、優秀で学習意欲の高い海外からの留学生を確保しようとする動きが活発化しています。
経済負担を軽減 奨学金獲得大作戦 (3)
アメリカの大学には、スポーツ推薦で進学するという道があることについて前回触れましたが、今回は、その方法についてご説明します。 まず理解していただきたいのは、スポーツ推薦はプロ選手を目指すトップアスリートだけのプログラムではないということです。NCAA(全米大学体育協会)に所属する大学では40万人以上の大学生がアスリートとして活躍していますが、その中で将来プロとして活躍できるのはごくわずかです。また、運良くプロ選手になれたとしても、引退後は別のキャリアを積むことになります。つまり、大学でしっかり学んで将来のキャリアにつなげるという点では、アスリートも一般学生も何ら違いはありません。
では、アメリカの大学はなぜスポーツに励む学生を優遇するのでしょう。その理由のひとつに、学業とスポーツを両立させることで人間的に大きく成長することが挙げられます。スポーツを通じて培ったチームワークやリーダーシップは貴重であり、また、限られた時間で最大限の成果を上げる工夫をしながら習得した「自律」や「時間管理」の能力は、社会に出た時に大いに役立ちます。つまり、学業とスポーツを両立する人は、即戦力として社会に受け入れられるのです。
経済負担を軽減 奨学金獲得大作戦 (2)
大学を通して授与される奨学金には、「ニーズ・ベース」と「メリット・ベース」があることは前回お話ししました。今回はメリット・ベースの奨学金の獲得方法について、詳しくご説明します。
アメリカの大学の授業料が高いのは周知の通りです。では、実際にどれくらい学費はかかるのでしょうか。学費とは、大学で学ぶのに必要な費用(授業料、および教材費)と生活するのに必要な費用(寮費、および食費)の合計です。学費は年々上昇傾向にあり、カリフォルニアの州立大学で年間2万から3万ドル程度(州内学生の場合)、私立大学は年間4万ドルを超える所が多く、5万ドルを超える大学も珍しくありません。
経済負担を軽減 奨学金獲得大作戦 (1)
アメリカの私立大学は、教育の質や学生のサポートは優れていますが、進学のハードルが高いという話を以前しました。なかでも最大のハードルが学費です。「私立は高いから、州立を目指す」という話をよく耳にしますが、州立よりも安く私立に進学する学生も少なくはありません。大学進学を自分の将来への投資と考えた時、質の高い教育をなるべく安い費用で受けることが賢い投資方法と言えます。今回から3回にわたり、ROI(Return on Investment)を高める上で重要な、奨学金の獲得方法についてご説明します。
「ファイナンシャルエイド」という言葉は、学費負担を軽減するための金銭的支援プログラムの総称です。その種類はさまざまで、返済が必要な「学生ローン」や、キャンパス内で働くことで経済支援が受けられる「ワークスタディー」もファイナンシャルエイドに含まれます。その中で、一般的に返済不要な金銭的支援を「奨学金(スカラシップ)」と言います。日本では、返済の義務を負う奨学金が数多くありますが、アメリカでは奨学金はすべて返済不要です。奨学金には、色々な団体が授与するものが多くありますが、最も重要なのは、金額的にも大半を占める大学からの奨学金です。この奨学金は、学生の経済的な必要性に応じて給与される「ニーズ・ベース」と、学生の能力に基づいて給与される「メリット・ベース」に大別されます。
受験生を効果的に選抜するSEM時代が到来
今回は、受験生が大学でどう評価され、合否の判定が下されるのかという、アドミッションの裏側についてお話します。前回、アメリカの大学では将来伸びる学生が評価されることをお話しましたが、実はそれだけではありません。どの大学も、それぞれが思い描く理想的な大学像を持っています。その大学像を実現するために、どの大学も幅広い観点で学生を評価し、目標とする学生構成を築き上げます。
「A大学は成績重視だ」とか、「B大学はボランティアをしていないと入れない」という話を聞くことがありますが、大学のアドミッションはそれほど単純ではありません。どの大学も、成績が優秀な学生は欲しいですし、リーダーシップのある学生やコミュニティーに貢献する学生も大いに求めます。また、芸術の才能のある学生や、スポーツに秀でた学生など、特別な才能を持つ学生も大学にとっては不可欠な人材ですし、そのほか性別、人種、出身地希望専攻など、考慮する点は山ほどあります。
米国の大学の種類と役割
大学のアドミッションの変化については前回お話しましたが、学生が大学を選ぶポイントにも変化が見られます。特にここ最近、「リベラルアーツ・カレッジ」を希望する学生が増えています。
リベラルアーツ・カレッジとは、ひと言で言うと「学部の教育を重視している大学」です。特定の職業に直結する専門知識や技術の会得よりも、幅広い教養を身に付けることを重視した教育を行い、将来さまざまな分野で活躍できる人材を育てます。リベラルアーツ・カレッジの大半は、小規模な私立大学です。カリフォルニアでは、比較的学力の高い学生でも州立大学志向が強く、最近までリベラルアーツ・カレッジを希望する学生は限られていました。
アミドッションを取り巻く環境の変化
「アメリカの大学の入学審査は複雑でわかりにくい」とよく言われます。「ハイスクールの成績が重要なのはわかるが、それ以外にもSATなどのテストのスコアが必要だったり、またボランティアや音楽、スポーツなどの課外活動も評価されるらしい。なぜ日本のように、わかりやすい入試にならないのか」。このようなご質問を受けることがよくあります。
日本とアメリカで入学審査が大きく異なる理由は、そもそも日米の大学で学生の評価の基準が根本的に異なるからです。
日本の将来を支える子供たち
日本の若者の内向き姿勢が顕著になっているとよく言われます。実際に内向き姿勢を示す調査結果もあり、例えば、日本からアメリカに来る留学生の数はここ5年間で4割以上減っています。もちろんアメリカだけが留学先ではありませんが、同期間に韓国やインドからの留学生が3割以上増え、中国からの留学生は倍以上に増えていることと比較すると、国際化が進むアジアの潮流に逆行しているように感じられます。
少子高齢化が進み国内市場が飽和する中で、日本の企業が生き残るためにはグローバル化が不可欠です。しかし、そのグローバル化を支える人材が育たないことに、日本の産業界は危機感を持っています。2010年にノーベル化学賞を受賞した根岸栄一さんも、日本の若者に対して積極的な海外修業を呼びかけています。
大学のアドミッションでは、成績だけでなく学生の人物評価も重要なポイントとなっています。学生のことをより良く知るために、提出されたアプリケーション以外の情報を求めて、積極的に学生にコンタクトをする大学が増えてきています。Kaplan Test Prepの調査によると、アドミッション担当者の約4分の1が受験生のFacebookをチェックしています。この割合は、3年前と比べると2.5倍に増えています。また、Facebookをチェックしたと回答したアドミッション担当者の約半数は、Facebookの中でアドミッションで不利になる情報を見つけたことがあると回答しています。また、CappexやZinchのサービスを利用して学生にコンタクトする大学も増えています。
Facebook等のSNSを利用したマーケティングはほとんどの大学で以前から行われていますが、最近では双方向アドミッションへの活用が一般的になってきていることが分かります。Facebook以外にも、GoogleやYouTubeで学生を検索したことがあるアドミッション担当者も増えており、SNSを利用したアドミッションの双方向化は今後も進んでいくことが考えられます。双方向アドミッションについては、いつ誰に見られるか分からないという不安を感じる学生も多いですが、上手に活用すればアドミッションを有利に進める手段にもなります。学生にとっては、自分を積極的に見せる準備をすることも今後はより重要になると考えられます。
University of Californiaでは、2011年秋入学を目指す学生のアプリケーションが急増しました。Freshmanのアプリケーションは前年度より6.1パーセント増えて、総数で142,235となりました。全てのキャンパスで受験者数が増加していますが、中でもUC San DiegoはFreshmanのアプリケーションが11.2パーセント増と人気が急上昇しています。Transferのアプリケーションの増加率はさらに大きく、2009年以降UC全体で26パーセント増えています。
Freshmanのアプリケーションのうち、州内学生のアプリケーションの増加率は3.6パーセントです。18歳人口がほぼ横ばいであることから、州内学生の増加は、学生全体の学力の向上によるものと考えられます。つまり、学力面での競争が一層激しくなっていると考えられます。また、アジア系学生の増加率は5パーセントとなっています。UCは、合格者におけるアジア系学生の比率を下げることを目標としているので、アジア系学生にとってアドミッションはさらに厳しくなっていくと考えられます。
Transferのアプリケーションの急増は、UCへの進学を目指す学生の増加と、UCのFreshmanの定員数の削減が影響していると考えられます。コミュニティカレッジ等で非常に高い成績を修めている学生でも、TransferでUCに進学できないケースが増えています。FreshmanのアドミッションがうまくいかなくてもTransferがある、という考え方は非常に危険なので、ハイスクール在学中にきちんと進学準備を進めることが大切です。
大学のアドミッションは、ここ数年で大きく変わってきました。その要因のひとつが、SEM (Strategic Enrollment Management 戦略的受験者管理システム) の導入です。SEMの考え方自体は以前からありますが、2008年ごろから全米で急速に広まってきました。各大学における予算削減の流れと、コンピュータシステムの進化がSEMの拡大を後押しした格好になっています。
よく「A大学は成績重視だ」とか、「B大学はボランティアをしてないと入れない」という話を聞くことがあります。100パーセント間違いとはいえませんが、大学のアドミッションはそれほど単純ではありません。どんな大学でも、成績の優秀な学生は欲しいし、リーダーシップのある学生やコミュニティに貢献する学生も欲しいはずです。大学が考慮するのは、それだけではありません。性別、人種、出身地、学生の希望する専攻も重要な要素です。音楽や美術の才能のある学生や、スポーツに秀でた学生など、特別な才能のある学生もぜひ欲しい人材と考える大学は多いのです。
このように、各大学はさまざまな要素を考慮してアドミッションを行い、それぞれの大学が理想とする学生構成を築き上げていくわけですが、この作業がまさにSEMです。最近では、大学経営の中枢にSEMを担当する部署が置かれるようになりました。例えば、UCLAではOffice of Analysis and Information Managementという名称で、大学の予算を管理する部門の中に置かれています。大学によって部署名は多少異なりますが、担当している業務は同じです。「欲しい学生を効率的に獲得する」ことが目的です。
今日では、州立・私立を問わずほとんどの大学がSEMを導入しています。各大学が理想とする学生構成を実現する上でこのシステムを導入するメリットは大きいですが、受験生にとっても、SEMに対応した進学準備が必要となります。例えば、SEMでは学生を細かくカテゴリーに分けて評価するため、ある特定の分野に秀でている学生が高く評価されやすく、全体的にバランスがとれているがこれといって特筆すべき点のない学生が評価されにくいという傾向があります。大学にアプライする際には、どのカテゴリーで勝負するのが自分にとって有利になるのか、よく考えることが大切です。
カリフォルニアの学生にとってUC進学は年々厳しさを増しています。受験者数が毎年過去最高を更新している中、UC各校は募集人数を絞り、州内学生の比率を下げています。州内学生のアドミッションを10年前と比較してみると、1999年に55,402人だった受験者数は、2009年には81,113人と、46パーセントも増加しています。これに対して、募集人数の増加は1999年の25,970人から2009年の32,468人と、25パーセントの伸びにとどまっています。
大学別に見ると、深刻な状況がさらに良く分かります。たとえば、UCLAでは1999年に30,962人だった受験者数は、2009年には46,266人と、49パーセント増加していますが、募集人数は1999年の3,872人から2009年の4,010人と、わずか3.5パーセントしか増えていません。
2010年には、さらに深刻な自体が起こりました。州内学生の数を減らし、その分州外の学生を増やす動きです。たとえば、UC Berkeleyは、2010年秋に12,915人の入学を予定しています。2009年と比べると50人少ないだけです。しかし、その内訳が問題です。2009年は、11,200人が州内学生でしたが、2010年は、州内学生の数が9,420人と、27パーセントも減少しました。大学関係者は、この動きを授業料収入を増やすためだと明言しています。州外学生は、州内学生の3倍の額の授業料を支払うことになるため、州外学生を増やすことは、大学の収入増加に直結するのです。
今後は、アジア系学生にとって、さらに厳しいアドミッションが待ち受けています。UC各校は、2011年のアドミッション(2012年入学の学生)から、SAT Subject Testのスコアをアドミッションからはずす新しいアドミッションを導入します。すでにご存知の方も多いと思いますが、この新しいアドミッションは、UCのアジア系学生の割合を下げることが主目的です。UCの試算では、新しいアドミッションを導入することにより、UC全体でアジア系の学生を2.1パーセント減らすことができ、逆に白人学生を2.3パーセント増やすことが可能となります。
このように、州内に住む日本人学生にとって、UC進学を目指すのは三重苦のような状況です。このような逆境に打ち勝つためには、UC一辺倒の進学準備からの脱却が必要です。幸い、カリフォルニア州内には、質の高い学部教育が受けられる私立大学はいくつもあります。州外まで目を向ければ、その数は大幅に増えます。UC各校は、大学院レベルの教育は世界的にも非常に高い水準にありますが、学部教育はコスト削減の影響もあり、残念ながら大学院と比較できるレベルのものではありません。質の高い教育が受けられる私立大学に、ファイナンシャルエイドを得て州立大学並のコストで進学することを目指すのが、賢明な選択と言えるでしょう。
大学進学の際に、高校の成績やテストのスコアが重要なのは言うまでもありませんが、応募の際に提出するエッセイの内容も極めて重要です。評価の基準が点数評価から人物評価にシフトする傾向が強まっていることもあり、テストのスコア以上にエッセイを重視している大学も少なくありません。ハイスクールのGPAやSATのスコアがどれだけ高くても、内容の薄いエッセイを提出したら、それだけでアドミッションの対象からはずされてしまうことはめずらしくありません。
アドミッションのエッセイは、Englishのクラスで書くエッセイやSATのライティングのような客観的にまとめ上げるエッセイとは大きく異なります。アドミッションのエッセイは、自分自身のことを深く掘り下げて書くことになるので、自分を売り込む絶好の機会だと考えましょう。単に与えられた質問に答えるだけでは、効果的なエッセイにはなりません。エッセイの題材を利用して、自分の考え方や自分独自の価値を多面的に表現することがポイントです。自分がなぜその大学に行きたいのか、という視点も大事ですが、自分が進学することによって、その大学にどのような価値をもたらすことができるのか、というところまで踏み込んでエッセイを書くことができれば、魅力的なエッセイとなるでしょう。
「SATは何点とればいいんですか?」という質問をよく受けます。とても答えにくい質問です。「モデルになるためには、身長何センチ以上あれがいいんですか?」と同じくらい答えにくい質問です。スタンフォード大学を例にあげて考えてみましょう。はスタンフォードは、SAT満点でも合格できない学生がいます。一方で、SATが1800点代でも合格する学生がいます。なぜこのようなことが起こるのでしょうか。その理由は、テストのスコアが、アドミッションにおける評価基準の中の、ほんのひとつに過ぎないからです。つまり、SATの点数は、アドミッションの判断の基準のひとつではあるが、合否の決定的な判断材料にはならないということです。
日本とアメリカの大学の学生の選び方は大きく異なりますが、最も大きな違いのひとつが、学生の学力の評価方法です。日本の大学は、今(大学受験時)学力が高い学生を選びます。これに対して、アメリカの大学は、将来伸びる学生、すなわちポテンシャルの高い学生を高く評価します。学生のポテンシャルを評価する方法として、SATのスコアが有効であると考えられてきました。そのため、各大学はアドミッションの際にSATのスコアを要求してきたのです。ところが、2000年以降、SATの点数と学生の将来性の相関関係が疑問視されるようになってきました。実際に、多くの大学でSATの点数と、在学中の成績の相関関係を調べています。そして、SATが学生の将来性を評価するツールとして不十分であるという調査結果が数多く発表されました。
これらの調査結果を受けて、アドミッションの際にテストスコアを要求しない大学が増えてきました。当初は中堅の大学が中心でしたが、この流れは徐々にエリート大学にも波及しはじめ、全米でもトップレベルの大学の中にも、SATを必須項目からはずす動きがでてきました。以下は、SATを必須項目からはずしたエリート大学の例です。
- Smith College, MA
- Pitzer College, CA
- Wake Forest University, NC
- Bowdoin College, ME
- New York University, NY
このような背景を最初に申し上げましたが、これはテストを軽視して良いということではありません。テストが学習能力を測るツールとして利用されること自体は、今後も続きます。また、ファイナンシャルエイドの額を決める際に、テストのスコアが影響する場合は多いです。テストの限界を理解した上で、自分のベストを尽くすことが大切です。テストの点数を上げるためのテクニックについて話し始めたらキリがないのでここでは触れませんが、ぜひ実践していただきたいことを2点挙げます。まず1点目は、11年生の間にSATとACTの両方必ず1回は受けることです。テストスコアの提出を義務付けている大学では、SATとACTは、どちらか片方のスコアを提出することになります。どちらのテストの方が点数がとりやすいかは、実際に両方受けてみれば自分である程度分かるはずです。その後は、自分に向いていると感じたテストに絞ってスコアアップを目指しましょう。
2点目は、Subject Testは、クラスで1年間学んできた教科のテストを5月または6月に受けることです。ハイスクールで学んだ記憶が薄れる前にテストを受けることで、より高得点が期待できます。UCの受験にSAT Subject Testのスコア提出が2011年のアドミッション(2012年入学の学生)から不要になるため、Subject Testの受験は不要と考える学生もいますが、UC以外の大学を受ける際にSubject Testのスコアが役立つ場合があるので、受けておいて損はありません。
UC各校は、2011年のアドミッション(2012年入学の学生)から、SAT Subject Testのスコアをアドミッションからはずす新しいアドミッションを導入します。新しいアドミッションの概要は以下の通りです。
- UC-Requiredのコースのうち、11コースを11年生(ジュニア)までに履修すること
- UC-RequiredのコースのWeighted GPA3.0以上を維持すること
- SAT Subject Testはアドミッション要件からはずす
新しいアドミッションで特筆すべき点は、SAT Subject Testがアドミッションで不要となることです。すでにご存知の方も多いと思いますが、この新しいアドミッションは、アジア系の学生が増えすぎてしまったUCの各大学が、アジア系学生の割合を下げることが主な目的です。UCの試算では、新しいアドミッションを導入することにより、UC全体でアジア系の学生を2.1パーセント減らすことができ、逆に白人学生を2.3パーセント増やすことが可能となります。
アメリカの大学は、いわゆるスポーツ推薦枠での大学進学という方法があります。スポーツ推薦による進学というと、プロスポーツ選手を目指すようなトップアスリートのためのプログラムのように感じるかもしれませんが、全くそうではありません。ハイスクールで積極的にスポーツに取り組んでいる多くの学生が、スポーツ推薦枠を利用して、進学を有利に進められる可能性があるのです。
アメリカの大学は、なぜスポーツをしている学生を優遇するのでしょうか。その理由のひとつとして、学業とスポーツを両立させることで、人間的に大きく成長できるという点が挙げられます。チームワークやリーダーシップを学ぶ場としてスポーツが優れていることはご存知の通りですが、スポーツを続ける価値はそれだけではありません。ハイスクールで学年が上がると、学習面での負担も大きくなります。その中で、スポーツも両立させていくことは至難の業です。しかしながら、もし両立させることができれば、学生本人にとって、大きな自信となりますし、またその成果は周囲も高く評価してくれます。また、ハイスクールで時間管理能力が身につけば、大学に進学してからも、大いに役立ちます。
スポーツ推薦で進学する学生には、スポーツ奨学金が支給されます。スポーツ奨学金は、一般の奨学金と比べて額が大きい場合が多く、また他州や海外からの留学生も対象となるため、非常に利用価値の高いスカラシップ・プログラムです。スポーツ奨学金の額は、種目や学生のレベルに応じて決まりますが、学費の半額以上がカバーされるケースも多いです。したがって、スポーツ推薦で進学する学生は、私立大学であれ、他州の州立大学であれ、かなり安い学費での進学が可能となります。また、一部の人気スポーツにおいては、フルスカラシップ(学費+寮費・食費が全額がカバーされる)が得られます。スポーツ推薦による進学は、通常のアドミッションと全く異なる準備が必要となります。
ファイナンシャルエイドには、大きく分けて2つの種類があります。ひとつは、大学から(厳密には、大学を通して)提供されるもの、そしてもうひとつが民間の団体から提供されるものです。ここでは、大学から提供されるファイナンシャルエイドに特化してご説明します。大学から提供されるファイナンシャルエイドが金額的に圧倒的に大きいため、いかに多くのファイナンシャルエイドを大学から受けるかが、その後の資金繰りに大きな影響を及ぼすからです。
大学から提供されるファイナンシャルエイドは、いくつか種類がありますので、それをまずご説明します。まず第一に、ニーズベースのグラントがあります。これは、経済的なニーズに基づいて提供されるファイナンシャルエイドのことです。二つ目が、メリットベースのスカラシップです。これは、主に高成績の評価により提供されるものです。成績以外に、リーダーシップやコミュニティ活動等への評価が含まれる場合もあります。三つ目が、タレントベースのスカラシップです。これは、ミュージックやアート、スポーツ等に秀でた学生が対象となる奨学金です。
ファイナンシャルエイドの額は、大学の予算や家族の年収、家族構成等に大きく影響されますが、私立の大学は、州立大学に比べてかなり多くのファイナンシャルエイドを学生に提供しています。州内学生としてUCに進学するのよりも安いコストで質の高い私立大学に通っている学生も数多くいます。
子どもを有名大学に入れたいと願う保護者の中には、有名大学に行った方が就職で有利になるに違いない、という考えが根強くあるようです。確かに日本の企業が採用活動を行う際に、学生の出身大学名に左右されるケースはいまだに良くあるようです。それでは、アメリカの大学に進学した場合はどうでしょうか。今までに300人以上の学生の就職サポートを行ってきた経験からいうと、就職活動において学校名は全く関係ないというのが、私の結論です。
アメリカは日本以上に学歴社会だと良く言われます。確かにその通りだと思います。日本は、「学歴社会」というよりも「学校名社会」といったほうが適切かもしれません。これに対して、アメリカは本当の意味で学歴社会です。就職活動では、大学の名前ではなく、大学在学中の成果が問われます。また、大学院での教育もアメリカでは重視されます。大学院を修了していないと就けない職種が日本よりはるかに多いことからも、アメリカの学歴社会の実態が良く分かると思います。
アメリカの社会が学校名ではなく学校での成果を重視するという点は納得がいくと思いますが、興味深い点は、アメリカの大学を卒業した後日本で就職をする場合でも、全く同じことが言えるということです。過去10年の間に、日本の企業は海外で学んだ学生の採用に積極的に取り組んできました。トヨタやソニー、パナソニック等の日本の大手企業が海外の就職フェアに参加し、学生を積極的に採用しています。海外の大学で学ぶ学生を採用しようとする企業に共通して言えることは、大学の名前ではなく、大学在学中の成果で人物を評価しようとしていることです。
グローバルな人材を獲得しようとする企業は、日本の企業であれアメリカの企業であれ、きちんと人物評価をして採用していることが良くお分かりいただけたと思います。もっとも、採用活動において学校名を問わないもうひとつの理由として、そもそも採用担当者が知らない名前の大学が多すぎて、学校名では判断がつかないという事情もあります。日本の採用担当者がアメリカの大学を良く知らないのは当然かもしれませんが、同じことがアメリカ国内でも起こっています。
一例として、Bowdoin Collegeを挙げて考えてみましょう。教育水準の高さときめ細かいサポートに定評のある東海岸の大学で、IVY Leagueの大学を蹴って進学したい学生が後を絶たないすばらしい大学です。もちろん卒業生の就職率も抜群にいいですが、西海岸では、Bowdoin Collegeの名前さえも知らない人がほとんどです。Harvey Mudd Collegeは、理工系の学生に人気が高いカリフォルニアの大学ですが、東海岸では、StanfordやCaltechに比べると知名度はきわめて低いです。このように、企業の採用担当者が大学名で人物を評価するということ自体無理があるわけですから、学生も、知名度など一切気にすることなく、自分に合った大学選びに専念することが得策といえます。
大学進学は、将来のキャリアを方向付ける重要な選択です。大学は、単に高等教育を受けるところではなく、プロフェッショナルとして社会へ出るための準備を行う場所でもあるため、進学先を決めるにあたって、将来の目標を定めることが大切です。
アメリカの大学は、各大学ごとに教育方法や校風などが大きく異なるため、進学先を決める際は、単に知名度で選ぶのではなく、将来の目標実現と自分の個性に最も適した大学を選ぶことが大切です。将来満足のいくキャリアを積むことができるように、高校生のうちからしっかり準備を進めていくことが大切です。
どの学生も、必ず他の人より秀でた部分を持っています。他の人よりも得意な分野がある人、他の人よりも夢中になれるものを持っている人、他の人よりも優れた芸術的感覚を持っている人など、一人ひとりの優れた部分を伸ばすことは、将来のキャリアアップにおいて、大きな武器となります。
社会で活躍している人は、他の人にはない個性をうまく活かしています。日本では、横並びの教育から個性を伸ばす教育への変革が求められていますが、アメリカでは、すでに個性を活かす教育が確立されています。他者との差別化を図り、自分自身の付加価値を高めていくことが、将来の成功につながると言えるでしょう。